2019年6月25日火曜日

債権各論92 改正民法605条の2

(不動産の賃貸人たる地位の移転)
第605条の2 前条、借地借家法(平成3年法律第90号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
3 第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
4 第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。

(e-Gove法令検索) 
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail/129AC0000000089_20200401_429AC0000000044/0?revIndex=4&lawId=129AC0000000089 
不動産屋の建物のイラスト

(参考:新旧対照条文 【PDF】法務省※) 
http://www.moj.go.jp/content/001242222.pdf 

「賃貸不動産が譲渡された場合の規定だね」
「1項によると、賃貸人の地位が当然に移転するんだね」

「契約上の地位の移転を定めた、改正民法539条の2の特則だね」
「1項は判例1※の明文化だね」

「2項前段で、移転させないこともできるんだね」

「賃貸人の地位を留保するという合意と、譲受人が譲渡人に賃貸するのが必要なんだね」

「譲受人・譲渡人の賃貸借が終わると、賃貸人の地位が当然に移転するんだね」

「2項後段だね」

「3項で、賃貸人の地位移転を対抗するには登記が必要なんだね」

「判例2※だね」

「費用償還・敷金返還債務は譲受人(又はその承継人)が承継するんだね」

「4項で、判例3※の明文化だね」

「承継しないと、賃貸人でなくなった譲渡人に請求をしないといけないね」

「譲渡人からの回収が困難だし、譲受人なら少なくとも賃貸不動産という財産(債務引当て)があるからだね」

第539条の2 契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。
(債権各論21 改正民法539条の2)
https://bengoshinobenkyou.blogspot.com/2019/04/215392.html

(不動産賃貸借の対抗力)
第605条 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
借地借家法
(借地権の対抗力等)
第10条 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
2 略
(建物賃貸借の対抗力等)
第31条
 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
2 略

(賃借人による費用の償還請求)
第608条 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第2項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

第622条の2 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

※判例1
大判大正10年5月30日民録27輯1013頁
(カタカナ等を改めたもの)

「賃借人がその賃借権を第三者に対抗することを得る場合において、賃貸人がその土地を第三者の譲渡したるときは、土地の新所有者はその賃貸借契約に基づく旧所有者の権利義務を承継し、旧所有者は賃貸人たる権利義務を有せざるものとす」
※判例2
最判昭和49年3月19日民集第28巻2号325頁
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52074


※判例3
最判昭和44年7月17日民集第23巻8号1610頁
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54132


(・賃貸借に関する見直し【PDF】法務省)
http://www.moj.go.jp/content/001255641.pdf

(一問一答 民法(債権関係)改正p316-8) 
https://www.shojihomu.co.jp/publication?publicationId=5311332 
※法務省のページにある「新旧対照条文」について、縦書きを横書きに、漢数字をアラビア数字に(号は除く)、「同上」を「同左」にしています。下線部は、「新旧対照条文」に付されているものです。