(相殺に関する経過措置)
第26条 施行日前にされた旧法第505条第2項に規定する意思表示については、なお従前の例による。
2 施行日前に債権が生じた場合におけるその債権を受働債権とする相殺については、新法第509条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
3 施行日前の原因に基づいて債権が生じた場合におけるその債権を自働債権とする相殺(差押えを受けた債権を受働債権とするものに限る。)については、新法第511条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
4 施行日前に相殺の意思表示がされた場合におけるその相殺の充当については、新法第512条及び第512条の2の規定にかかわらず、なお従前の例による。
(e-Gove法令検索)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail/129AC0000000089_20200401_429AC0000000044/0?revIndex=4&lawId=129AC0000000089
甲
「相殺の経過措置で、意思表示や債権発生が施行日前かどうかだね」
乙
「『意思表示』でも、1項は相殺制限(禁止)特約の意思表示、4項は相殺の意思表示だね」
甲
「2項は債権発生だね」
乙
「附則10条1項によると、債権発生自体に加えて、債権発生原因の法律行為も含むんだね」
甲
「3項は『施行日前の原因』だね」
乙
「自働債権の発生原因が施行日前に生じたかどうかだね」
甲
「1項って、債権譲渡の、譲渡制限(禁止)特約の経過措置と違うんだね」
乙
「債権譲渡は、譲渡制限(禁止)特約付の債権譲渡が施行日前かどうかが基準だけど、相殺は制限(禁止)特約をしたのが施行日前かどうかだね」
(法務省)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html
(時効に関する経過措置)
第10条 施行日前に債権が生じた場合(施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む。以下同じ。)におけるその債権の消滅時効の援用については、新法第145条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
(債権の譲渡に関する経過措置)
第22条 施行日前に債権の譲渡の原因である法律行為がされた場合におけるその債権の譲渡については、新法第466条から第469条までの規定にかかわらず、なお従前の例による。
(相殺の要件等)改正前
第五百五条 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。
(相殺の要件等)
第505条 略
2 前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
(債権の譲渡性)
第466条 略
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
4 略
(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第509条 次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)
(差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第511条 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
2 前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
(相殺の充当)
第512条 債権者が債務者に対して有する1個又は数個の債権と、債権者が債務者に対して負担する1個又は数個の債務について、債権者が相殺の意思表示をした場合において、当事者が別段の合意をしなかったときは、債権者の有する債権とその負担する債務は、相殺に適するようになった時期の順序に従って、その対当額について相殺によって消滅する。
2 前項の場合において、相殺をする債権者の有する債権がその負担する債務の全部を消滅させるのに足りないときであって、当事者が別段の合意をしなかったときは、次に掲げるところによる。
一 債権者が数個の債務を負担するとき(次号に規定する場合を除く。)は、第488条第4項第2号から第4号までの規定を準用する。
二 債権者が負担する1個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべきときは、第489条の規定を準用する。この場合において、同条第2項中「前条」とあるのは、「前条第4項第2号から第4号まで」と読み替えるものとする。
三 第1項の場合において、相殺をする債権者の負担する債務がその有する債権の全部を消滅させるのに足りないときは、前項の規定を準用する。
第512条の2 債権者が債務者に対して有する債権に、1個の債権の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺については、前条の規定を準用する。債権者が債務者に対して負担する債務に、1個の債務の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺についても、同様とする。
(一問一答 民法(債権関係)改正p388)
https://www.shojihomu.co.jp/publication?publicationId=5311332
(我妻・有泉コンメンタール民法p1012)
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8092.html
(実務解説 改正債権法p326、331)
https://www.koubundou.co.jp/book/b307837.html
(ケース別 債権法 新・旧規定適用判断のポイントp152-60)
https://www.sn-hoki.co.jp/shop/item/5100092