(契約期間中の修繕)
第9条 甲は、乙が本物件を使用するために必要な修繕を行わなければならない。この場合の修繕に要する費用については、乙の責めに帰すべき事由により必要となったものは乙が負担し、その他のものは甲が負担するものとする。
2 前項の規定に基づき甲が修繕を行う場合は、甲は、あらかじめ、その旨を乙に通知しなければならない。この場合において、乙は、正当な理由がある場合を除き、当該修繕の実施を拒否することができない。
3 乙は、本物件内に修繕を要する箇所を発見したときは、甲にその旨を通知し修繕の必要について協議するものとする。
4 前項の規定による通知が行われた場合において、修繕の必要が認められるにもかかわらず、甲が正当な理由なく修繕を実施しないときは、乙は自ら修繕を行うことができる。この場合の修繕に要する費用については、第1項に準ずるものとする。
5 乙は、別表第4に掲げる修繕について、第1項に基づき甲に修繕を請求するほか、自ら行うことができる。乙が自ら修繕を行う場合においては、修繕に要する費用は乙が負担するものとし、甲への通知及び甲の承諾を要しない。
(国交省・『賃貸住宅標準契約書』について)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html?fbclid=IwAR3haqoFoHW0rnfgVWTqvJLt472RdjNtKowJY5kWSAECw5EUlBpwEgwpr-8
「修繕の規定で、民法を若干修正して、修繕義務と費用負担とを分けるんだね」
乙
「9条1項では、賃借人に帰責事由がある場合も賃貸人に修繕義務を課して、費用を賃借人に負担させるんだね」
甲
「民法606条1項ただし書は、賃借人に帰責事由があれば修繕義務自体も賃貸人にないね」
乙
「本契約で定めなくても、修繕費用相当額が、415条の債務不履行損害賠償にあたるね」
甲
「9条2項は民法606条2項とほぼ同じだね」
乙
「賃借人に、正当な理由がある場合の拒否権を認めているね」
甲
「9条3項で、賃借人が修繕箇所を通知して協議を求める」
乙
「賃借人から知らせない限り、賃貸人は修繕箇所が発見できないからだね」
甲
「9条4項は、民法607条の2だね」
乙
「同条1号だね」
甲
「9条5項は、修繕義務と費用負担とも賃借人に課すという特約だね」
乙
「軽微で安価な場合にまで、全て賃貸人が修繕義務を負うようにしなくていいんだね」
・民法
(賃貸人による修繕等)
第606条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
(賃借人の意思に反する保存行為)
第607条 賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
(賃借人による修繕)
第607条の2 賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。
(債務不履行による損害賠償)
第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
(国交省・◇「賃貸住宅標準契約書 平成30年3月版・連帯保証人型」p15,25)
https://www.mlit.go.jp/common/001230366.pdf