(明渡し時の原状回復)
第15条 乙は、通常の使用に伴い生じた本物件の損耗及び本物件の経年変化を除き、本物件を原状回復しなければならない。ただし、乙の責めに帰することができない事由により生じたものについては、原状回復を要しない。
2 甲及び乙は、本物件の明渡し時において、契約時に特約を定めた場合は当該特約を含め、別表第5の規定に基づき乙が行う原状回復の内容及び方法について協議するものとする。
(別表第5)
(国交省・『賃貸住宅標準契約書』について)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html?fbclid=IwAR3haqoFoHW0rnfgVWTqvJLt472RdjNtKowJY5kWSAECw5EUlBpwEgwpr-8
甲
「原状回復の規定で、1項で通常損耗と経年変化を除くんだね」
乙
「民法621条だね」
甲
「通常損耗と経年変化は賃貸人が負担するんだね」
乙
「通常損耗は、使用の対価である賃料で賄うべきだね」
「経年変化は貸していなくても発生するからだね」
甲
「2項で、特約で賃借人が負担すると定めることもできるんだね」
乙
「民法90条と、消費者契約法に反しない範囲で認められるね」
甲
「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』というのもあるね」
乙
「再改訂版だと、【賃借人に特別の負担を課す特約の要件】として
①特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
②借主が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
③借主が特約による義務負担の意思表示をしていること
を挙げているね」
( 法務省■パンフレット(賃貸借契約)【PDF】 p4)
http://www.moj.go.jp/content/001289628.pdf
・民法
(賃借人の原状回復義務)
第621条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
(公序良俗)
第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
(基本原則)
第1条 略
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
・消費者契約法
(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)
第8条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項
二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項
三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項
四 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項
2 前項第1号又は第2号に掲げる条項のうち、消費者契約が有償契約である場合において、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合には、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき。)。以下この項において同じ。)に、これにより消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任を免除するものについては、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。
一 当該消費者契約において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該事業者が瑕疵のない物をもってこれに代える責任又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合
二 当該消費者と当該事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約又は当該事業者と他の事業者との間の当該消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結に先立って又はこれと同時に締結されたものにおいて、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該他の事業者が、当該瑕疵により当該消費者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を負い、瑕疵のない物をもってこれに
代える責任を負い、又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合
(消費者の解除権を放棄させる条項の無効)
第8条の2 事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる消費者契約の条項は、無効とする。
(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第9条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が2以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第10条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の
適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
最判平成17年12月16日集民第218号1239頁
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62594
(原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版))
https://www.mlit.go.jp/common/000991391.pdf
(国交省・◇「賃貸住宅標準契約書 平成30年3月版・連帯保証人型」p15-6,27-9)
https://www.mlit.go.jp/common/001230366.pdf
(新基本法コンメンタール 借地借家法[第2版]p174-5)
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8058.html