弁護士が法改正等を読み、主に対話形式で説明を試みます。 司法試験で行っていた勉強法、いわゆるセルフレクチャー※を文字起こししたイメージです。 ※自分で自分に説明して理解や記憶を目指す、「夢をかなえる勉強法」(伊藤真著)等参照。 ※本文の法令・リンク先の情報は投稿時のものです。
2020年5月16日土曜日
法学25 法解釈の例 物権的請求権
甲
「例えば所有権って、不法占拠者に何か請求できるの?」
乙
「請求できる条文がないから、論点の分類①だね」
甲
「何も請求できないということになるの?」
乙
「所有権の意味がなくなるね」
甲
「立ち退き等の請求を認める必要があるね」
乙
「必要、つまり具体的妥当性から考えて認めるべきだね」
甲
「法的安定性、つまり許容性は?」
乙
「いわゆる占有訴権の条文から導くね」
甲
「どうやって?」
乙
「最弱とされる占有権に条文を定めておけば、所有権にも当然、占有訴権にあたる物権的請求権があると解釈する」
甲
「許容性ってこれだけ?」
乙
「民法202条の文言『本権の訴え』からも導くよ」
・民法
(所有権の内容)
第206条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
(占有回収の訴え)
第200条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
(本権の訴えとの関係)
第202条 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。
2 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。
大判大5.6.23民録22-1161
(カタカナ等を改めたもの)
「所有権に基づく所有物の返還請求権はその所有権の一作用にしてこれより発生する独立の権利にあらざるをもって所有権自体と同じく消滅時効によりて消滅することなしといわざるを得ず」
(新基本民法2p96-7)
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641138131