2020年5月10日日曜日

法学23 法解釈 論点の分類③複数の制度の適用関係が不明

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「事実関係によっては、当てはまる制度が幾つもあるの?」

「ひとつとは限らないね」

「例えば?」

「借りた・預かった物を壊した場合だね」


「使用貸借・賃貸借と、寄託契約だね」

「債務不履行と不法行為の両方が考えられるね」
「消費貸借は、全く同じ物を返す必要がないね」

「どちらも、効果は損害賠償請求権の発生だね」



「両方の責任(損害賠償請求権)が成立して、競合すると考えられるね」

火の用心の夜回りのイラスト









「火事の場合も同じ?」

「債務不履行と不法行為の両方がありうるけど、不法行為は失火責任法を適用するね」
「火事という事実関係だけだと、民法709条と失火責任法の両方が適用されそうだけどね」

「何で失火責任法を適用するの?」

「一般法・特別法の関係にあって、特別法を優先するからだね」

「失火責任法だとどうなるの?」

「重過失がなければ、不法行為は成立しない」

「債務不履行責任は負うの?」

「重過失がなくても、民法415条1項の『債務者の責めに帰することができない事由』に当たるとは限らないのが判例だね」


 甲
「他には?」

「法人の代表や幹部が対外取引とかをして第三者に損害が発生した場合だね」

「法人に賠償させればいいんじゃない?」

「昔の民法44条1項、今の法人法78条197条だね」
「権限にない取引でも、賠償請求できると思う?」

「外形上、権限があると見えればできるんだっけ?」

「そう判断をした判例もあるけど、外形上そう見えるなら表見代理にも当たるかもしれないね」

「民法110条を適用した判例もあるの?」

「類推適用した判例はあるね」


 ・民法
(債務不履行による損害賠償)
第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 略
(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

  (使用貸借)
第593条 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
(賃貸借)
第601条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
(寄託)
第657条 寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。


(消費貸借)
第587条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

(権限外の行為の表見代理)
第110条 前条第1項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
(代理権授与の表示による表見代理等)
第109条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 略

・一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第2章 一般社団法人 第3節 機関 第4款 理事
(代表者の行為についての損害賠償責任)
第78条 一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
第197条 前章第3節第4款(略)の規定は、一般財団法人の理事、理事会、監事及び会計監査人について準用する。(略)


・明治32年法律第40号(失火ノ責任ニ関スル法律)
民法第709条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス


(e-Gov法令検索)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0300/cond

・最判昭和30年3月25日民集第9巻3号385頁
『火災による賃借工場の滅失は上告人Aの責に帰すべき事由による』『失火ノ責任ニ関スル法律」は「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス......」と規定するところであつて、債務不履行による損害賠償請求の本件に適用のないことは明らか』
・最判昭和44年6月24日民集第23巻7号1121頁
『村のための金銭消費貸借契約の締結はもとより村収入役の権限に属しないが、村の出納その他の会計事務はもつぱら村収入役のつかさどる』『収入役の右金銭受領行為が外形上その職務行為であることを理由に、これにより善意の第三者に加えた損害につき、上告人において損害賠償の責に任ずべき』

・最判昭和34年7月14日民集第13巻7号960頁
『地方公共団体の長自身が他よりの借入金を現実に受領した場合は、民法一一〇条所定の「代理人がその権限を超えて権限外の行為をなした場合」に該当するものとして、同条の類推適用を認める』

(我妻・有泉コンメンタール民法p768-70)
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8092.html

(法律の使い方p112-3,123-6)
http://www.keisoshobo.co.jp/book/b25647.html
(先生!バナナはおやつに含まれますか?―法や契約書の読み方がわかるようになる本―p133-5)
https://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/103313.html
(新基本民法2p160,164-5)
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641138131