弁護士が法改正等を読み、主に対話形式で説明を試みます。 司法試験で行っていた勉強法、いわゆるセルフレクチャー※を文字起こししたイメージです。 ※自分で自分に説明して理解や記憶を目指す、「夢をかなえる勉強法」(伊藤真著)等参照。 ※本文の法令・リンク先の情報は投稿時のものです。
2020年4月21日火曜日
法学11 法律と憲法(続き
甲
「憲法も広い意味の法律・法だよね」
乙
「国会では改正等ができないから、狭い意味での法律ではないね」
甲
「広い意味の法律・法だから、守る義務があるんだよね」
乙
「守る義務がある人は限られているよ」
甲
「そうなの?」
乙
「99条に挙げた人だね」
甲
「いろんな人が挙がっているけど、要するにどんな人?」
乙
「国家権力・公権力を行使する人たちだね」
甲
「そうでない一般の『国民』はどうなの?」
乙
「原則として守る義務がない、ということになるね」
甲
「というか、一般国民つまり私人・民間企業が違反するというのが考えにくいね」
乙
「守る以前に、憲法に違反できる人が限られているともいえるよ」
甲
「例えば、民間企業が従業員を14条1項の差別的取り扱いをする場合は?」
乙
「いわゆる間接適用をする、というのが判例だね」
甲
「直接適用される憲法の規定ってないの?」
乙
「15条4項は『私的に』とあるから、明文で私人間の適用を認めた条文だね」
「28条は直接適用されるらしいね」
甲
「憲法と(狭い意味の)法律は、目的が違うんだね」
乙
「そうだね」
甲
「憲法の目的って?」
乙
「下記の昭和48年判例にあるとおり、『国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する』ためだね」
甲
「法律とはベクトルが違うんだね」
乙
「そうだね」
甲
「憲法と法律とが食い違ったら?」
乙
「98条で、法律は無効だね」
甲
「自分たちのために法律をつくるというのを前回確認したけど、それでも無効?」
乙
「法律を民主的につくるというのは、多数決で少数者の人権侵害をしてしまう可能性があるからだね」
「憲法違反≒少数者の人権侵害の場合(要件)は、憲法違反の法律に効力を認めない、という解決方法(効果)にしているよ」
甲
「法律と違って国会で改正できないけど、どう改正するの?」
乙
「96条1項で、国会の発議と国民投票だね」
・憲法
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第15条
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
・判例
最判昭和48年12月12日民集第27巻11号1536頁
「憲法の右各規定は」「国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もつぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。」
「私的支配関係においては、個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがあり、その態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは」「場合によつては、私的自治に対する一般的制限規定である民法一条、九〇条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存する」
最判昭和56年3月24日民集第35巻2号300頁
「就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法九〇条の規定により無効であると解するのが相当である(憲法一四条一項、民法一条ノ二参照)」
(衆議院 労働基本権に関する基礎的資料p104)
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/chosa/shukenshi022.pdf/$File/shukenshi022.pdf
(憲法Ⅰp248-54,527-8)
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641131187