2019年2月26日火曜日

相続42 改正民法1035条

(居住建物の返還等)
第1035条 配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物の所有者は、配偶者居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
2 第599条第1項及び第2項並びに第621条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。
(e-gov法令検索)
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail/129AC0000000089_20200712_430AC0000000072/0?revIndex=8&lawId=129AC0000000089
 (新旧対照条文 【PDF】)
http://www.moj.go.jp/content/001253528.pdf
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「配偶者居住権の消滅で返還義務が生じる、というのが1項本文だね」

「どんな場合に消滅するの?」

「・存続期間満了(1036、597Ⅰ)
 ・配偶者死亡(1036、597Ⅲ)
 ・建物全部滅失等(1036、616-2)
 ・建物が配偶者の財産になった
 ・放棄
 ・所有者による意思表示(1032Ⅳ)だね」

「たしかに、自分の財産になれば配偶者居住権は必要なくなるね」

「混同(520)によって消滅するね」

「例外は?」

「他の人が共有持分を持っている場合(1028Ⅱ)だね」

「同じような規定はあるの?」

「借地借家法15条2項の、自己借地権だね」

「逆に、配偶者が共有持分を持っていれば返還を求められない、というのが1項ただし書きだね」

「配偶者居住権が消滅しても、共有持分に基づいて建物を使えるからだね(249)」
「消滅した場合全てで、返還を求められるわけではない」


「放棄って明文にないけど、できるの?」

「配偶者居住権は債権だから、債権の一般的性質として放棄はできる」

「債権の放棄って何条?」

「519条の『債務の免除』を裏返すと債権の放棄になる」


「2項で使用貸借・賃貸借の規定を準用しているね」

「附属物の収去と、原状回復だね」

民法(未施行改正含む)
(借主による収去等)
第599条 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
2 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。

(賃借人の原状回復義務)
第621条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

(配偶者居住権)
第1028条 
2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。

(共有物の使用)
第249条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

第519条 債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。
第520条 債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

借地借家法
(自己借地権)
第15条 略
2 借地権が借地権設定者に帰した場合であっても、他の者と共にその借地権を有するときは、その借地権は、消滅しない。

(潮見詳解相続法p346-8)
http://www.koubundou.co.jp/book/b415899.html
(我妻有泉コンメンタールp1021)
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7694.html
(我妻債権総論p366)
https://www.iwanami.co.jp/book/b260852.html