(配偶者による使用及び収益)
第1032条 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。
2 配偶者居住権は、譲渡することができない。
3 配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。
4 配偶者が第1項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。
(e-gov法令検索)
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail/129AC0000000089_20200712_430AC0000000072/0?revIndex=8&lawId=129AC0000000089
(新旧対照条文 【PDF】)
http://www.moj.go.jp/content/001253528.pdf
甲
「1項本文は配偶者の用法遵守義務だね」
乙
「被相続人が亡くなる前、配偶者が建物の一部しか使っていなかったら?」
甲
「1項ただし書きだと、建物全部を使えるようになるね」
乙
「2項で譲渡禁止にしているね」
甲
「あくまで配偶者自身に従前の生活をさせるための権利だから、譲渡を認めると制度趣旨と整合しないね」
乙
「賃借権だと、投下資本回収の点から譲渡や転貸を例外的に認める場合があるよね」
甲
「あるよ」
乙
「配偶者居住権でも資本を投下することはあるよね」
甲
「あるよ」
乙
「回収は考えなくていいの?」
甲
「考えていないわけじゃないよ」
乙
「具体的には?」
甲
「配偶者居住権を所有者に買い取らせる」
「3項にあるように、承諾を得て第三者に貸す」
乙
「『第三者に貸す』って、配偶者自身の生活と関係なくなるんじゃない?」
甲
「そうだね」
「もっとも、第三者に永久に貸すわけじゃない」
「第三者に貸し終えたら、配偶者が使うんだよ」
「ちなみに3項で、所有者の承諾があれば増改築もできる」
乙
「4項は消滅についてだね」
甲
「541条の催告解除手続みたいだね」
乙
「1項からの内容を踏まえると、使用貸借の規定(594条)にも似ているね」
「ただ、594条3項の解除は、催告しなくてもできるね」
改正)民法
(催告による解除)
第541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
(借主による使用及び収益)
第594条 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
2 借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
3 借主が前2項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。
(潮見詳解相続法p338-47)
http://www.koubundou.co.jp/book/b415899.html
(我妻有泉コンメンタールp1210,1248-9)
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7694.html
(事実認定体系新訂契約各論編1p297)
https://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/103393.html
(相続法改正ガイドブックp25-6)
https://www.kajo.co.jp/book/40730000001.html
(法制審議会民法(相続関係)部会資料26-2p2)
http://www.moj.go.jp/content/001246035.pdf
(相続に関するルールが大きく変わります 法務省)
http://www.moj.go.jp/content/001277453.pdf