【第2節 配偶者短期居住権】
(配偶者短期居住権)
第1037条 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第891条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合 第3項の申入れの日から6箇月を経過する日
2 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3 居住建物取得者は、第1項第1号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。
(e-gov法令検索)
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail/129AC0000000089_20200712_430AC0000000072/0?revIndex=8&lawId=129AC0000000089
(新旧対照条文 【PDF】)
http://www.moj.go.jp/content/001253528.pdf
甲
「配偶者短期居住権だね」
乙
「短期でないほうの配偶者居住権とは別なんだね」
甲
「何を参考にしたの?」
乙
「判例※とフランス法らしいね」
乙
「1項本文の3つ目の括弧書きによると、建物の一部しか使えないんだね」
甲
「短期でないほうの配偶者居住権は、建物全体を使えるようになる(1032条1項ただし書)」
乙
「他には何が違うの?」
甲
「いろいろあるけど1項本文では、配偶者短期居住権では『収益』ができない」
乙
「1項本文は1号と2号があるね」
甲
「1号は、配偶者を遺産分割の当事者になる場合だね」
乙
「2号は1号以外という文言だね」
甲
「配偶者が遺産分割の当事者にならない場合だね」
乙
「具体的には?」
甲
「潮見p330を図にしたよ」
乙
「1項ただし書きは配偶者短期居住権を有しない場合だね」
甲
「・短期でないほうの配偶者居住権取得
・欠格(891)
・廃除(892・893)、だね」
乙
「2項は要するに、居住建物を第三者に譲渡すると、配偶者の使用の妨げになるのを前提としているの?」
甲
「短期でないほうの配偶者居住権と違って、第三者に対抗できる規定(1031Ⅱ)がないからだろうね」
乙
「3項は消滅申入れだね」
甲
「1項本文2号によって、申入れから6ヶ月経過で消滅するね」
民法(未施行改正あり
(配偶者による使用及び収益)
第1032条 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。
2 略
(相続人の欠格事由)
第891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
(推定相続人の廃除)
第892条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
(遺言による推定相続人の廃除)
第893条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
(配偶者居住権の登記等)
第1031条 略
2 第605条の規定は配偶者居住権について、第605条の4の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。
(不動産賃貸借の対抗力)
第605条 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等)
第605条の4 不動産の賃借人は、第605条の2第1項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
一 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
二 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求
(法務省)
http://www.moj.go.jp/content/001263482.pdf
※最判平成8年12月17日民集50巻10号2778頁
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52508
(潮見詳解相続法p316-31)
http://www.koubundou.co.jp/book/b415899.html
(民法(相続関係)等の改正に関する中間試案補足説明p3)
http://www.moj.go.jp/content/001198631.pdf